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治療パイオニア

泌尿器科 講師 三宅牧人

称号名)上部尿路癌に対する蛍光イメージガイド尿管鏡下レーザー焼灼による腎温存療法

医療の充実と治療の質向上を目的として,2017年 奈良県立医科大学附属病院に「高度外科技術センター」が設立されました。その枠組みにおいて,2022年 本学発祥及び誇るべき治療手技を有し,かつ当該治療手技の普及に強い意欲のある医師に「奈良医大(治療手技等)パイオニア」称号制度が設立されました。このたび泌尿器科学教室から選出いただき,本学での治療パイオニア 第 1 号の称号を付与賜りました。学内外を問わず手技の伝授・教育を通じて,本邦の手術診療の発展に寄与する制度と理解しています。

泌尿器科 講師 三宅牧人 泌尿器科 講師 三宅牧人

上部尿路癌におけるアンメットニーズ

当科では伝統的に尿路上皮癌を中心として,多くの基礎研究・臨床研究を行ってまいりました。常にアンメットニーズを意識しながら診療に携わることで,いま本当に望まれている治療がなにかであることを知り,その開発に日々取り組んでいます。

上部尿路癌の標準治療は腎尿管全摘除術であり,手術の侵襲は大きく,かつ手術後の腎機能低下は免れ得ません。尿路上皮癌に罹患する患者は高齢者が多く,おのずと心臓疾患・呼吸器疾患など併存疾患を有する症例,もともと腎機能が低い症例も少なくありません。本手技は,高侵襲な腎尿管全摘除術に伴う合併症のリスクや,将来の腎機能低下に伴う血液透析などの腎代替療法を延期・回避することを目的とした低侵襲な腎温存治療であり,その臨床的役割は高いと考えられます。

転移がなくリスクの低い上部尿路癌 (臨床的 Ta-T1) に対しては,積極的に腎機能を温存する目的で経尿道的尿路内視鏡手術が有用であることが報告されており,レーザーなどを用いた腫瘍焼灼術が施行されてきました。 しかし,他施設報告をみてみると治療後 2 年の尿路再発率が 50% 以上と高く,治療成績が安定していません。その大きな要因として,上部尿路癌に対して通常使用される白色光源では腫瘍焼灼後の残存腫瘍や平坦病変,微小病変を検出することは難しく,術中に完全切除できたかどうかの判断が難しいことが最大の要因だと考えられてきました。5-アミノレブリン酸塩酸塩を用いた蛍光イメージングは光力学的診断と呼ばれます。本手技は,上部尿路癌に対する経尿道的レーザー焼灼治療という難易度の高い手技において,光力学的診断を応用した極めて新規性の高い治療です。

手技の紹介

麻酔下に,硬性尿管鏡もしくは軟性尿管鏡を用いて経尿道的にアプローチします。腫瘍を直視下におき,レーザー(ホルミウム:ヤグレーザーまたはツリウム:ヤグレーザー)により腫瘍を焼灼します。

レーザーによる腫瘍の焼灼イメージ

以下に「上部尿路癌に対する蛍光イメージガイド尿管鏡下レーザー焼灼による腎温存療法」の 1 例を示しています。本症例は白色光源ではきわめて確認しにくい平坦腫瘍を有しており,蛍光イメージングにより腫瘍の広がりが明瞭に観察することができました。レーザー焼灼治療中に白色光源および蛍光イメージングをこまめに切り替えながら,腫瘍を余さず焼灼することに成功し,3 か月後の尿管鏡検査では残存および再発腫瘍を認めていません。現時点で上部尿路癌に対して,5-アミノレブリン酸塩酸塩を使用することは保険適応外であり,特定臨床研究 (実施計画番号:jRCTs051210042) として実施しています。

「上部尿路癌に対する蛍光イメージガイド尿管鏡下レーザー焼灼による腎温存療法」の1例

尿中遺伝子診断技術の併用

本治療後は腫瘍の再発を検出するために,CT 検査または MRI 検査,および膀胱鏡検査を定期的に実施していく必要があります。再発をいちはやく,かつ低侵襲に検出するために,尿中剥離細胞を対象とした遺伝子検査「ウロビジョン」を併用しています。従来から使用されている尿細胞診検査と比較して,高感度に悪性尿路細胞の存在をとらえることができることが知られています。現時点で上部尿路癌に対して,「ウロビジョン」検査は保険適応外であり,特定臨床研究 (実施計画番号:jRCTs051210042) として実施しています。

手術手技の見学について

我々が現在行っている技術を,これから腎温存治療をはじめていこうと考えておられる先生方にお伝えすることができれば幸いです。手術見学のご希望や診療内容についてのご質問ありましたら,遠慮なくメール等でお問い合わせください。当科の手術日は火・水・木曜日です。

【問い合わせ先:urology@naramed-u.ac.jp 奈良県立医科大学泌尿器科学教室 医局】

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