高線量率(HDR)ブラキセラピーを受けられる患者さんへ
奈良医大では、2004年からヨウ素125密封小線源治療を1377例(2019年 5月末)の方に行い、優れた長期成績を報告してきております。これまでは、がんが前立腺被膜外へ進展する(T3a)方までは対象としてきましたが、精嚢浸潤 (T3b) の方は、強度変調放射線治療(IMRT)による治療を行ってきました。
近年、前立腺局所に十分な線量を投与することで前立腺癌の死亡率を低下できることが判ってきました。外部照射のみでは十分な線量を処方することが難しいのが現状です。一方、組織内照射と外部照射を組み合わせることで、より高い線量を前立腺へ照射可能となります。精嚢浸潤症例ではグリソンスコアが高い方が多く、短時間で局所に高線量を投与できる高線量率(HDR)ブラキセラピーが非常に良い適応になります。
奈良医大では2018年10月からイリジウム192密封小線源を用いたHDRブラキセラピーを開始しました。原則4泊5日の入院で、治療前に4ヶ月、HDRブラキセラピーと外部照射(46Gy/23回)の期間2ヶ月はホルモン治療を併用します。また、悪性度が高い方やリンパ節転移が疑われる方、PSAが高い方では放射線治療後2年間ホルモン治療を併用します。
HDRブラキセラピーの詳しい説明は下記をご参照ください。
奈良医大では、前立腺がんの方々に、PSA監視療法、手術(ロボット支援下)、IMRT、低線量率ブラキセラピー(ヨウ素125)を行ってきましたが、さらに超高リスク症例に対して、新たな治療法としてHDRブラキセラピーが加わりました。関連病院では、陽子線治療も行っております。それぞれの患者さんに最適の治療を、がモットーです。
2019年5月 文責:田中宣道