1. トップ
  2. 外来について
  3. 各専門分野
  4. 男性の排尿障害(前立腺肥大症など)

男性の排尿障害(前立腺肥大症など)

1.前立腺肥大症

膀胱の出口にある前立腺が大きくなり尿道を圧迫すると、おしっこが出にくい、がまんが難しい、おしっこが近いなど様々な症状が現れます。前立腺がんとは異なる良性の疾患です。以下に、当科での代表的な治療を掲載します。

薬物療法

主にα1遮断薬またはPDE5阻害薬を処方します。重症例では、併用することがあります。特に前立腺が大きい場合、5α還元酵素阻害薬を用いることがあります。

α1遮断薬:古くから使われている標準治療薬です。ふらつき(起立性低血圧)や射精障害が現れることがありますが、中止により消失します。

PDE5阻害薬:効果は、α1遮断薬とほぼ同じです。おしっこの症状を軽減するだけではなく、性機能を回復させることもあります。

5α還元酵素阻害薬:前立腺体積を最大で30%縮小させる効果があります。性機能が低下することがあります。

手術治療

手術治療は、@薬物治療の効果が不十分、A中等度から重症の症状、B尿閉・尿路感染症・血尿・膀胱結石などの合併症がある(または危惧される)場合に適応が考慮されます。

手術治療

経尿道的に挿入した内視鏡下に、ループ電極で前立腺を切除する(TURP)、ループ電極で前立腺腺腫と外科的被膜との間を剥離・核出する(TUEB)、ホルミウムレーザーを照射し、前立腺腺腫と外科的被膜との間を剥離・核出する(HoLEP)、ツリウムレーザーを照射し、前立腺腺腫を蒸散する(ThuLRP)などがあります。

手術治療

どの手術方法でも経尿道的前立腺切除術(TURP)との比較で、効果とその持続性は同等です。
術後の尿道狭窄、腹圧性尿失禁、尿閉の頻度などの合併症も同等です。手術方法に寄って、抗凝固薬や抗血小板薬を服用中、もしくは出血傾向のある高リスク患者さんにも有効かつ安全に施行可能です。術野は生理食塩水で灌流し、視野を確保します。

2.過活動膀胱

突然がまんが難しい強い尿意が現れ、尿失禁(尿漏れ)を伴うことがあります。水の音を聞いたり、水に触れたりすると発生することが多く、冷えにより増悪します。神経疾患が原因となることがありますが、男性では多くが前立腺肥大症に合併します。以下に、当科での代表的な治療を掲載します。

薬物治療

主に抗コリン薬またはβ3作動薬を処方します。重症では、併用することがあります。

抗コリン薬:(唾液分泌減少による)口内乾燥や便秘が発生または増悪することがありますが、種類は豊富です。飲み薬に加えて、貼り薬もあります。
緑内障などを患っている場合には、内服できません。

β3作動薬:抗コリン薬と効果は同じで、副作用は非常に少ない薬剤です。
一部の不整脈治療薬を飲んでいる場合には、内服できません。

ボツリヌス治療

ボツリヌス治療

充分な薬物治療を12週間以上受けても効果が不十分な「難治性」や内服薬による副作用のため治療を継続できない場合に行う治療です。 尿道から挿入する内視鏡で、膀胱壁にボツリヌス毒素という薬剤を注射します。 通常は局所麻酔による日帰り手術で行いますが、不安や注射刺激による反応が強い場合には入院で全身麻酔または腰椎麻酔をかけて行うこともできます。
効果持続期間は、およそ6〜8か月です。

仙骨神経刺激療法

充分な薬物治療を12週間以上受けても効果が不十分な「難治性」や内服薬による副作用のため治療を継続できない場合に行う治療です。図のように腰のあたりに小さな電気刺激装置を埋め込んで、膀胱につながる神経を刺激します。全身麻酔で電極を差し込み、数日から1週間かけて効果(尿漏れが減ること)を確認した上で装置を埋め込みます。従って、効果のない方に装置を埋め込むことはありません。保険診療で受けられますので、年齢や収入に応じて支払額の上限は決まっています。

3.前立腺がん手術後の尿失禁(尿漏れ)

人工尿道括約筋の項をご覧下さい。
人工尿道括約筋