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女性に多い泌尿器疾患

女性尿失禁

1.過活動膀胱

突然がまんが難しい強い尿意が現れ、尿失禁(尿漏れ)を伴うことがあります。水の音を聞いたり、水に触れたりすると発生することが多く、冷えにより増悪します。神経疾患が原因となることがありますが、多くは明らかな原因を特定できず「加齢変化」とされます。以下に、当科での代表的な治療を掲載します。

薬物治療

主に抗コリン薬またはβ3作動薬を処方します。重症では、併用することがあります。
抗コリン薬:(唾液分泌減少による)口内乾燥や便秘が発生または増悪することがありますが、種類は豊富です。飲み薬に加えて、貼り薬もあります。
緑内障などを患っている場合には、内服できません。
β3作動薬:抗コリン薬と効果は同じで、副作用は非常に少ない薬剤です。
一部の不整脈治療薬を飲んでいる場合には、内服できません。

ボツリヌス治療

ボツリヌス治療

充分な薬物治療を12週間以上受けても効果が不十分な「難治性」や内服薬による副作用のため治療を継続できない場合に行う治療です。尿道から挿入する内視鏡で、膀胱壁にボツリヌス毒素という薬剤を注射します。通常は局所麻酔による日帰り手術で行いますが、不安や注射刺激による反応が強い場合には入院で全身麻酔または腰椎麻酔をかけて行うこともできます。効果持続期間は、およそ6〜8か月です。

仙骨神経刺激療法

充分な薬物治療を12週間以上受けても効果が不十分な「難治性」や内服薬による副作用のため治療を継続できない場合に行う治療です。図のように腰のあたりに小さな電気刺激装置を埋め込んで、膀胱につながる神経を刺激します。全身麻酔で電極を差し込み、数日から1週間かけて効果(尿漏れが減ること)を確認した上で装置を埋め込みます。従って、効果のない方に装置を埋め込むことはありません。保険診療で受けられますので、年齢や収入に応じて支払額の上限は決まっています。

2.腹圧性尿失禁

咳やくしゃみ、運動の時に尿が漏れるなら、腹圧性尿失禁です。骨盤底筋体操や薬物治療は一定の効果はありますが、しっかり治したい場合、当科では手術(中部尿道スリング手術)を積極的に勧めています。

中部尿道スリング手術(TVTまたはTOT)の説明はこちら

骨盤臓器脱(膀胱瘤、子宮脱、直腸瘤、膣断端脱)

立っているときに膀胱や子宮、直腸が下がって、膣から脱出します。子宮を摘除されたあとでも発生します。骨盤臓器脱は、違和感だけでなく、おしっこが近い、がまんできない、おしっこが出にくいなど様々な症状を引き起こします。以下に、当科での代表的な治療を掲載します。

ペッサリー

膣の大きさに合わせて、図のようなリング1個を入れます。昼間だけ入れて寝る前に外す(自己脱着)が理想ですが、できる方はごく一部です。6か月以内ごとに内診して、細菌感染や癒着がないことを確認します。

手術治療

経膣的手術(TVM)や腹腔鏡手術(仙骨膣固定術)などを行っています。

経膣的手術(TVM)の説明はこちら

腹腔鏡下仙骨膣固定術の説明はこちら

間質性膀胱炎

おしっこが近い、残尿感がある、おしっこがたまると膀胱が痛いなどの症状があります。過活動膀胱とは異なり、トイレに行くまでに尿が漏れることは少ない疾患です。長い間「膀胱炎」のような症状が続いて、治療を受けても良くならない場合に疑ってください。
原因は不明です。ハンナ型とよばれる痛みなどの症状が強い場合に、膀胱水圧拡張術(麻酔をかけて膀胱を水で膨らませる)やジメチルスルホキシドという薬剤の膀胱注入がよく効きます。残念ながら、内服薬に「特効薬」はありません。当科では症状と病状に合わせて、相談しながら適宜な治療を行っています。