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腎がん

腎がんとは?

 腎がんは腎臓の尿を作る部分である腎実質の尿細管上皮細胞に由来する悪性腫瘍です。発症頻度は、人口10万人に対して2−4人程度で、50−70歳にかけて多く、男女比は3:1で男性に多いのが特徴です。

症状は?

 腎がんは血尿、腫瘤触知、疼痛が3大症状といわれていますが、近年では、これらの症状が揃うことは少なく、大部分は検診や他の疾患における腹部超音波検査(エコー)やCT検査において偶然発見されるもの(偶発がん)が多くなっています。従って、近年では腎がん全体の70%程度が転移のない腎臓に限局した早期がんです。

検査は?

 超音波、CT、MRIなどの画像検査を組み合わせて、臨床病期(腫瘍の広がりや進行度)を診断します。腎がんに特異的な腫瘍マーカーはありませんが、当院では過去の症例経験をもとに、血液検査での貧血やCRPの上昇、あるいは血沈の亢進の有無などで、独自の治療効果予測を行い、治療方針の決定に役立てています。

治療は?

 腎がんは抗がん剤による化学療法や放射線治療に対する反応性に乏しく、手術による癌病巣の摘除が第一選択となります。手術には、がんの発生した腎臓を全部摘出する「根治的腎摘除術」と、がんの部分だけを切除する「腎部分切除術」がありますが、当院では腫瘍径の小さな限局性腎がんや腎機能に問題がある患者さんには、腎機能の温存を目指した腎部分切除術を積極的に行っています。これまで200例の腎部分切除術を施行し、非常に良好な生存率や腎機能温存の手術成績を報告してきました。また、根治的腎摘除術は、開腹で行う手術と内視鏡で行う腹腔鏡手術がありますが、年間計40例ほど行っています。大きな腫瘍や進行した腎がんは開腹手術で摘除しますが、それ以外の腎がんは腹腔鏡手術を行っています。

 一方、転移があり進行した腎がんの患者さんに対しては、他科との連携により、脳・肺・肝臓などへの転移巣への手術治療を積極的に行うとともに、摘出困難な場合には転移層に対する放射線治療も行っています。また、薬物療法としては、従来のインターフェロンやインターロイキンなどサイトカインによる免疫療法に加えて、ネクサバール(ソラフェニブ)やスーテント(スニチニブ)などの分子標的薬による治療を行っています。分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるシグナル(信号)伝達経路をブロックすることで、血管新生を促す因子の活性化を阻害し、腎がんに特徴的な腫瘍の血管新生を抑制し、がんの増殖を抑える作用があります。免疫療法で効果が得られない患者さんに対しては分子標的薬に切り替えて治療する場合や、初めから分子標的薬による治療を選択する場合もあります。サイトカイン、分子標的薬のいずれも副作用の出現頻度が比較的高いため、投与中は厳重な経過観察を行っています。さらに、最近、様々な分子標的薬が開発され、転移性腎がんの治療は広がりを見せています。その中で、さまざまの薬物療法の中から、副作用の発現頻度を抑え、最大の抗腫瘍効果を得て、患者さんに応じた治療法を行うために血液データや摘出組織の遺伝子学的プロファイルを検討し、テーラーメード医療を提供できるよう日々取り組んでいます。